いつ登録したか忘れてしまったのですが、元内藤証券の中国部長:内藤尚機氏のメルマガ「中国株投資レッスン」を拝読しています。
日本で見聞きする世界の経済情報は、どうしても欧米発のモノが多くなります。
さらにこうしたニュースは、欧米→日本のマスコミを介して伝えられるため、例えばアメリカのニュースソースに直接あたると、なんかニュアンスが違うといったことも、結構あると思います。
「欧米以外」になると、その傾向はより顕著になると感じます。
そういう点で、GDP世界2位の中国に関する情報は、その重要性からも、一方向からではなく多方面から仕入れる 必要があるかもしれません。
そこで本日は、冒頭にご紹介したメルマガの最新号
2020年10月23日 第632号「トランプ政権の対中強硬政策は効果があった
のだろうか?」
が、興味深い内容だったこともあり、ご紹介することにしました。
米中対立は新冷戦と言われているが、その争点は何なのか?
ちょうど本日、日経にも「民主主義、少数派に 豊かさ描けず危機増幅」という記事が掲載されていましたので、そちらも引用しながらお話したいと思います。

上掲は、旧冷戦と今回の新冷静の対比ですが、先のメルマガでは、まさに米中の争点が、①経済面なのか、それとも②イデオロギー(政治思想・社会思想)にあるのか、どちらなのか?という点がフォーカスされています。
上の図の2、3番目に当たる部分です。
もし争点が経済面であれば
田代氏は、もしこの新冷戦が、
アメリカが世界最大の経済大国としての地位を中国に明け渡すことに拒否反応を示すグル
ープによって主導されている
のであれば、
あと10年もすれば、よほどのことがない限り、中国の経済規模はアメリカを追い越すだろう。
<中略>
経済規模が逆転されてしまい、差が開いてしまえば、中国が世界最大の経済大国で
あることが常識化する。あと15年もたてばそうなるので、必然的にアメリカの
対中強硬姿勢はフェードアウトするだろう。
と述べています。
経済面での両国間の問題としては、以下の2つが挙げられるでしょう。
対中貿易赤字
購買力平価(国よってマックやスタバの値段が違い話)によって為替レートが決定されるという考えに基づけば、人民元は安すぎ、そのため貿易赤字が生じているとするものです。
中国企業の国際的な存在感の高まり
言わずもがな、ハイテク企業への一連の制裁・排除などの施策を生み出している背景です。
覇権は中国に と考える根拠は?
以下のとおり書かれています。
- 人口比:アメリカ3.3億人vs中国14億人という圧倒的な差
- GDPの伸び:中国の1人当たりGDPは2019年には1万ドルを超え。消費が大きく伸びる時期に差し掛かっている
- 外貨の蓄積:20数年の間に貿易で稼いだ膨大な資金
- 国家による強権:国家主導で多額の資金を集中的に投資
に向かわせることが可能
では、よく耳にする不安要素については、どうなんでしょうか?
たびたび取り上げられる弱点については?
中所得国の罠
「中所得国の罠」とは以下のような傾向・状態を言います。
発展途上国が一定規模(中所得)にまで経済発展した後、成長が鈍化し、高所得国と呼ばれる水準には届かなくなる状態ないし傾向を指す通称
世界的に見て、この傾向は顕著であり、韓国、台湾、アルゼンチン、ブラジル、チリ、マレーシア、メキシコ、タイといった国々が高度経済成長を維持することができず、一人当たりGDPが10,000-12,000ドルを突破できない、もしくは時間が掛かった。
<以上Wikipediaより>
上記に列挙された国々のうち、韓国や台湾はその後、電機やIT分野で産業の高度化を行い、高所得国入りを果たしました。
この罠もこと中国においては、上に挙げた国家による強権がある限り、より無駄のない効
老齢化懸念
こちらも、一人っ子政策の功罪として、よく耳にする話です。
ただこれについても、同メルマガでは、
不足する労働力は、そうした相対的に経済発展が遅れ、労働力の溢
れた“親中の小国”から容易に調達できる。
そして、
人的補充など必要ないかもしれない。<中略>今や、労働不足への対応策
は小売り現場で
の無人店舗実験にまで及んでいる。<中略>一方で、生産現場における主に生産性や品質向上を目的とした省力化投資が積極的に行われている。
と一蹴しています。
一方、争点が経済面では無いとすると
前段に書いた、②イデオロギー(政治思想・社会思想)に対する反対であれば、事態は複雑、世界の混乱はさらに深まるだろう と、同メルマガでは述べられています。
以下は、前掲と同じ日経の記事からの引用ですが、民主主義が少数化し、”非”民主主義が台頭している姿が浮き彫りになっています。

民主主義を揺らるがしているのは、低成長と富の一局集中
自由主義諸国でいわゆる“神の見えざる手”が充分に働かないのは
、政治的に強すぎる既得権益者の存在があるからだ。中国はそれを国家が権力 で抑え込むことができる。
これはメルマガの記述ですが、日経の記事では、
- 民主化したものの、賃金水準はEU平均の3分の1のハンガリー
- ルカシェンコ大統領が、予告なしに6期目の就任式を強行したベラルーシ
- 昨年2019年に非民主主義に逆戻りしたフィリピン
などの事例が紹介されています。
投資では、引き続き米国神話が叫ばれてはいますが
間も無く大統領選です。
- 市場はいま「決まらないこと」に対してマイナスの反応を示している
- 決定さえすれば、どちらの候補者が大統領になろうとも、株価にとってはプラス
という楽観論が台頭しています。
一時は確かにそうなのかもしれませんが、この先の4年さらには8年というスパンで見た場合、表面化してこない部分で、大きな潮流の変化が起こる可能性も十分にあります。
私のように余生が短めの場合は、逃げ切れるのかもしれません(笑)。
でも、まだ若い世代の方は、日々目に飛び込んでくる情報だけを鵜呑みにせず、より広い視野で大局を注視していく必要は間違いなくありそうです。
以上、本日はメルマガ「中国株投資レッスン」と日経の記事を題材に、米国と中国の覇権争いについて、記してみました。